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天国からのお客さま を観た感想とネタバレ⑤故夏目漱石がヒットする文学の講義?

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BSプレミアムで10月20日土曜日夜8時~10時まで放送されたドキュメンタリー、スーパープレミアム「天国からのお客さま」を観ました。

www.nhk.or.jp

この番組は、ロボット工学の世界的権威である大阪大学石黒浩教授の全面協力のもと、死者が現世に蘇った。という設定のドキュメンタリーでした。

蘇ったのは、1997年に亡くなった勝新太郎さん、2011年に亡くなった立川談志さん。そして1916年に亡くなった夏目漱石さんでした。

この番組は2時間あったので、分けて感想を書いています。

以前書いた物です。↓

天国からのお客さま を観た感想とネタバレ①人生相談前半 - テレビ好きぴえーるの日記

 

天国からのお客さま を観た感想とネタバレ②故 勝新太郎、現世の高校生に演技指導? - テレビ好きぴえーるの日記

 

天国からのお客さま を観た感想とネタバレ③故 立川談志、志らくと太田光と会う - テレビ好きぴえーるの日記

 

天国からのお客さま を観た感想とネタバレ④人生相談後半 - テレビ好きぴえーるの日記

  

いとうせいこうさんと奥泉光さんが呼ばれた理由

夏目漱石は今から102年前、49歳で亡くなりました。「こころ」は700万部を売り上げるベストセラー作家です。

私も「こころ」は学生時代に読みました。Kが誰か?頭が混乱したのを覚えています。

 

夏目漱石が蘇り、ベストセラーの作り方を講義する、という設定でした。

夏目漱石のアンドロイドが、小説家の奥泉光さんと、いとうせいこうさんの二人を前に『文学論講義 再び』と題して講義を行いました。

 

このお二人は、「文芸漫談」というライブを定期的に行っていて、そこで夏目漱石の小説にツッコみまくってるらしいのです。

文芸漫談シーズン4

 

 

「こころ」は失敗作。「吾輩は猫である」は「トムとジェリー」。「妖怪草枕!」など過激な表現で夏目漱石さんの作品を評しています。

 

文学ヒットの法則

今回は、夏目漱石が最も力を入れた「文学論」についての講義です。ここからはアンドロイドの夏目漱石を人形扱いせず、漱石先生と表現したいと思います。

 

講義を始める前に漱石先生が、いとうさんと奥泉さんの二人に「「こころ」はボーイズラブ」だとか、「坊っちゃん」についても何かあるようだね。」と先制攻撃を仕掛けてきました。

いとうさんは負けじと「僕は「坊っちゃん」は、童貞…。女性との交わりを持てば、あんなイライラもしないのに…。(中略)真面目と言えば真面目な、その当時の学生の心をグッと掴んだんじゃないかなと。今で言ったら、「ジャンプ」読んでる子供たちみたいな…。友情とかいうところに漱石先生があのような人気を博したものを書いた所以があるような気がしてるんですけど。」と言いました。

対して漱石先生は「私も密かに、鴎外先生よりは上手に書けたと思っておる。」と毒づき、二人を苦笑いさせていました。

講義をする前に、漱石先生がスライドで見せたのは、100年前のベストセラー作品名を、年表に当てて並べた一覧表でした。

それらのなかで、100年経っても売れ続けているのは漱石先生の小説ばかりでした。

いとうさんと奥泉さんの小説は、100年後も読まれているでしょうか?漱石先生に問われて口ごもる二人。

小説が、時代を超えて読まれるというのは不思議なことで、何故古びない小説があるのか?それを考えてみたいと漱石先生はおっしゃいました。

漱石がヒット作の法則を語る理由

どうして漱石先生がヒット作の法則を語り始めたのか?

生前の夏目漱石はおよそ110年前、今回と似た講義を行ったそうですが、難解で分からないと批判されたそうです。

そこで、満を持して授業をやり直しに来た、というのが今回の設定です。

 

100年前の夏目漱石がそのまま語っておられたら、難しい言葉を使って説明されたでしょう。けれど、今回の蘇った漱石先生のお言葉は、今風にアレンジされていてとても分かりやすいものでした。

インクのシミでハメる仕掛け1-音とリズム

「本を手にして、文字を目で追う。この時目にするのは、いわばインクのシミに過ぎない。そのインクのシミが我々を夢中にさせる。これは果たして、インクが好きなんだろうか。」と漱石先生は言います。

まず、「インクのシミでなぜヒットを作れるのか?」という講義を始められました。

 

「読まれる小説には、読者を幻惑する仕掛けがある。」とおっしゃる漱石先生。幻惑とは「ハマる」と言ってもいい。あるいは「没入」とも。

「言葉には音がある。音もまた読者を幻惑する要因であろう。」と言い、漱石先生はいとうせいこうさんが作詞した、レキシの「狩りから稲作へ」という曲の歌詞をスライドに出しました。

狩りから稲作へ feat. 足軽先生・東インド貿易会社マン 歌詞【レキシ】 | 歌詞検索UtaTen(うたてん)

 

この歌詞の、語末や文末だけ拾うと、「ドキ」「ドキ」「スキ」。「食べテタ」「赤かッタ」「貝ヅカ」「いつシカ」。「ナウマンゾウ」「みなソウ」。漱石先生は「これはエンドライム。脚韻の遊び。」と言います。

「人はどういうわけか似た音を喜ぶ。これはギリシャ語や中国語、あるいは英語や日本語他、古今東西にも見られる現象だ。ダジャレの類も似た音を用いて滑稽さを生んでるのは確かだ。」と詳しく説明されました。

 

この曲は長澤まさみさん主演の月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」の第6話、内村光良さんがゲストの回で流れていました。

私はその時、歌詞が気になりつつも忘れていました。なんとなく頭に残ってて、今回この講義で取り上げられて、初めてレキシの曲だと知りました。

レキシといえば、「西郷どん」の曲も作ってて、NHKで流れていました。

SEGODON 歌詞【レキシ】 | 歌詞検索UtaTen(うたてん)

 

 

次に、今年芥川賞受賞した若竹千佐子さんの小説「おらおらでひとりいぐも」の、独特な東北弁を取り上げました。

 「あいやぁおらの頭このごろ、なんぼがおがしくなってきたんでねべが。どすっべえ、この先ひとりで、如何にすべがぁ如何にもがじょにもしかたながっべえ」の部分。

「たとえ全て意味が分からなかったとしても、音として聞く分には何だか心地よい。」と音の不思議を語る漱石先生です。

 

次に「草枕」を取り上げました。

 

夏目漱石「草枕」をamazonで検索

 

「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」という文章を奥泉さんに読ませる漱石先生。

「我ながら気持ちのいい文章だ。」と言います。

 

確かに「草枕」の音は一度聴いたら耳から離れない響きをしていますね〜。

 

私はこの講義を観て、百人一首でも頭から離れない歌があるのを思い出しました。

「滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ」 

という大納言公任の歌です。

「か」と「な」が繰り返し出て、学生時代に何度かしか読んでいないのに、覚えていました。

意味までは理解していなくても、覚えていた言葉でした。

 

インクのシミでハメる仕掛け2-たとえる

漱石先生は次に村上春樹さんの「国境の南 太陽の西」を取り上げました。

村上春樹「国境の南 太陽の西」をamazonで検索

 

「まるで玉葱の薄皮のように軽そうなカーディガンだった。」という部分。

漱石先生は「例えられるものと例えるもの。この2つの異物をつなぎ合わせることに妙味がある。」と説明しました。

 

上手な例えであれば、読者はすぐに分かってくれる。でもいい例えなんてなかなか見つかりません。ヒットする文学には上手な例えが出来ている、ということです。

 

インクのシミでハメる仕掛け3-他人の不幸

カフカ「変身」の冒頭「ある朝グレーゴル・ザムザが不安な夢から目を覚ましたところ、ベッドのなかで自分が途方もない虫に変わっているのに気がついた。」という部分。

漱石先生は「読者はザムザ氏の身に生じたことが自分に生じたら、到底耐えられない。だが、文章を通じた間接経験としてなら、何故だか楽しめてしまう。」と指摘しました。

人の不幸は蜜の味。です。

 

ベストセラー誕生の秘密

漱石先生は重要なことを語り始めました。読者のことです。

「読者がどのように読むかは自由である。この状態に耐えるということが、作家にとっても辛くも楽しい仕事なのかもしれないね。」と言いました。

インクのシミをどう読むかは、読者の数だけ異なった理解があるし、時代によっても変わる。

では、どうすれば100年を超えるベストセラーを作れるのか??

 

「作家は時代の子である。ベストセラーの多くは、当時の文脈が分からなくなり、読みづらくなったものたちであろう。一方、時代が変わっても意味が通じる書き方があるかもしれない。古代ギリシャホメーロスがいるね?二千数百年以上経った今でも理解出来てしまう。アキレウスの怒りを感じることが出来る。」と語る漱石先生です。

 

時代を超える小説とは、意識をフォーカスした時の感情の揺れ幅が大きいもの。

 

「文学とは、読む者の心を揺さぶり、それを読まなかったら生じなかった情緒を巻き起こす。これを諸君らの時代に例えるなら、諸君の体が、あるいは心が、ハードウェアだったとするならば、小説はその機械に読み込ませるソフトウェアのようなものかもしらん。すなわち、人間というものの感情をハッキングする。そういうものであると。」と漱石先生はおっしゃいました。

 

「文学とは、安全に心を遊ばせる装置である。もし不安な夢から目覚めて虫になってしまったとしたら…。こんな具合に心を遊ばせて、先を知らずには済まない気持ちにする幻惑の装置である。」と話されました。

 

漱石先生の講義は終わりました。

 

ハッキング…。

人の心を動かせるようなものを作っていければ、100年後も読まれるものが作れるというお話でした。

 

例えが上手くて、想像の中で遊べて、リズムの良くて…。曲ならまだ分かりますが、文章でそれをやるのは難しいと思います。

しかし夏目漱石が100年前に出した本が今も売れている事実。

100年前に読んだ人たちとは違う解釈を現在の私たちはしているのかもしれません。けれど同じ文章を共有しているというのが不思議でなりません。

100年前も1000年前も、人の感情はそう変わらないのかもしれません!!

 

最後に

5回に分けて、「天国からのお客さま」の内容を書かせてもらいました。面白い番組でした。

死んだ人を蘇らせるという形で、生前おっしゃっていたことを今風にアレンジして伝えてくれるいい番組でした。

私のなかでは勝新太郎さんの話が一番面白かったです。

声や文字だけでなく、姿かたちを似せた人形が話す…というのは斬新な試みで、本当にその場に亡くなった方がいるような錯覚を覚えました。

今回蘇った三人の方の、生きていた時の姿をあまり知らないからこそ、入り込めて見れたと思います。(夏目漱石なんて生まれる前に既に亡くなっていたし。)

しかし、立川談志さんと会った志らくさんの態度を見ていると、本物に会っているみたいに目を合わせなかったり、お土産を持って来たりしていて、かなりリアリティーがありました。

中村玉緒さんなんて、勝新太郎さんと目を合わせたりしてラブラブを見せつけていました。

 

人形でもなんでも、亡くなった方に会いたいという周りの方の気持ちが、画面越しに伝わって来て、観ているこちらも嬉しくなりました。

 

私は録画して何回も見ました。画面を通しての番組の雰囲気がものすごくよかったと感じました。

他の方が蘇るのもあれば観てみたいです。やしきたかじんさんとか…。でも生きている時よくテレビで見ていたので、色々アラは探してしまうでしょうけど…。

 

NHKの番組はリクエストすると再放送してもらえる可能性がありますので、興味を持たれた方は、是非リクエストしてみてください!

 「百聞は一見にしかず」です。

 

以上、「天国からのお客さま」を観た感想とネタバレでした。

 

 

 

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