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【3代将軍実朝と妻信子の物語】佐藤雫『言の葉は、残りて』を読んだ感想

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『小説すばる』ニ〇一九年十二月号·第三十二回小説すばる新人賞受賞作。佐藤雫『言の葉は、残りて』2020年、を読みました。

『言の葉は、残りて』は、鎌倉幕府第3代将軍·源実朝と、御台所/実朝の妻·信子夫妻を中心に描かれた歴史小説です。

『鎌倉殿の13人』と違うところ

物語は、実朝が3代将軍なる前、千幡と呼ばれていた幼い時代から始まる。

少年は、兄頼家の急逝により、実朝となり、摂関家の娘で後鳥羽上皇の従妹にあたる、信子と結婚。

信子は、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、千世と呼ばれる人物です。

この若い夫婦。

『鎌倉殿…』では実朝が「そんな気持ちになれない。」と距離を取って、仲が良くないように描かれています。

が、『言の葉は、残りて』では、よく会話を交わし、一緒に由比ヶ浜で遊ふなど、とても仲睦まじい夫婦です。

ドラマでは、サラッと流されていた実朝が疱瘡にかかった時の話。

信子が、隔離された実朝のもとに行こうとして、政子に叱られ涙を流し、和田朝盛に梅の花を託す。

その梅の花を見た実朝が、信子とまた梅を見たいと、病を乗り越えるシーンは、泣けました。

二人の夫婦のつながりが、より濃くなる重要なエピソード。

花を渡してくれた朝盛が、のちに和田合戦で、一族と主君の狭間で苦悩することになるのも泣けました。

実朝の、家臣や妻への、さらけ出せない心の内の葛藤が丁寧に描かれています。

 

言の葉で治める将軍になりたい

父が後継者として選び、武芸に秀でた兄·頼家に比べ、体も細く、武芸より和歌を詠む方が好きな実朝。

妻の信子に「私は、言の葉で世を治める将軍になりたい。」と話し、自分らしい治め方を模索。

でも、武の力が支配する武士の世界では、周りがなかなか許してくれない。

それでも、自分が信じる道に突き進もうと励む実朝の姿は、応援したくなります。

彼は、けして北条のいいなりではなかった。

畠山の謀反、和田合戦を経て、北条の力が及ばない地位を求めて行く。



『鎌倉殿の13人』の原作?

実朝を中心に描く一方で、北条家の家族関係も、政子を中心に描かれていました。

特に、義時が恐ろしい存在でした。

北条のためなら、姉の子の頼家でも手をかける義時。

政子が「全ては、北条のため、か」と聞くと、義時が「いいえ、鎌倉のため。にございます」と答える。

この言葉の言い回しが、『鎌倉殿…』でもよく出ていたこと。

義仲の嫡男·義高の処遇をどうするか、頼朝に掛け合う政子のやりとりが『鎌倉殿…』にそっくりだったこと。

他にも『鎌倉殿…』の原作かな?と思うところが多々ありました。

もちろん、物語は実朝が公暁に討たれるところも描かれてます。

ドラマではまだですが、それもこの物語の通りになるのでしょうか?

ゾッとします。

この物語を読む限り、公暁の苦悩も分かるので同情すべき点はあります。が、許せないですね。

興味のある方は、先に読んでみてはいかがですか?

 

以上。『言の葉は、残りて』を読んだ感想でした。